石油給湯器のスペックの違いとして、最も大きな要素は「フルオート/オート/標準」という3種類に見られるお湯張り機能の有無でしょう。
もともとお風呂のお湯を貯めるという行為は、浴槽近くの蛇口でお水なりお湯なりを浴槽に落とし込むということが主流でした。しかしこれだと任意でタイマーを設定したりしなければ、お湯を溢れさせてしまうということがありました。
「自動的に止まってくれたら便利なのにね」という意見から、お湯張り機能が誕生したと言われています。これが今からもう20年以上前の話です。
現在の主流は間違いなく「お湯張り機能がある機種」ですが、お湯張り機能のない標準タイプも、まだまだ一定の支持を得ています。そしてお湯張り機能にも性能差があり、それでフルオートとオートの2種類が用意されているという感じです。
本記事では、石油給湯器の「フルオート/オート/標準」の違いについて解説します。
お風呂のお湯張り機能とは?
まずはこれまでに標準タイプしか使用したことがないというユーザーに向けて、お湯張り機能が何なのかについてご説明します。お湯張り機能とは「ボタン1つで決まった湯量のお湯をお風呂に張ってくれる」という機能です。
例えば「200Lのお湯が入れば、溢れさせてしまうこともなく、肩までしっかりと浸かれる」という環境だったとすると、『ボタン1つで200Lのお湯を張り、設定温度に沸かしあげて「お風呂が沸きました」と教えてくれる機能』となっています。
もちろん湯量もある程度は調整可能なので、浴槽のサイズや好みの湯量に合わせてお湯張りをすることも可能です。
通常、お風呂の追い炊き機能を有する給湯器を使用している場合は、上記画像のような循環金具(循環フィルター)が浴槽内に取り付けられています。
これは「追い炊き時に浴槽内のゴミが給湯器側に行かないようにする」等の目的で設置されているのですが、お湯張り機能を有する給湯器の場合はこの循環口からお湯が注がれます。
フルオート、オート、標準の違いとは?
お湯張り機能がない機種が標準タイプ
お風呂を設定温度に沸かし上げる機能(追い炊き機能)があって、お湯張り機能がない種類を標準タイプと呼びます。
このタイプだと、ユーザー自身が蛇口を開け、お風呂に必要な分のお湯(または水)が入った頃を見計らって、ユーザー自身が蛇口を閉める必要があります。
フルオートとオートの違い
一方で、お湯張り機能と追い炊き機能の両方があるタイプがフルオートとオートになるのですが、この両者の違いは少し複雑です。非常に大雑把に表現すると、多機能なのがフルオート、フルオートと比べると機能が少ないのがオートです。
フルオートとセミオートの違いは、1番分かりやすい部分で言うと「お湯張りができるシチュエーション(残り湯の有無)」です。
- フルオート:いつでも決められた湯量に調整可能、自動調整も可能
- オート:浴槽が空の状態からお湯張りをする前提の機種
残り湯がある状態でも、ふろ自動ボタンを押すだけ、あるいは自動的に湯量調整してくれるのがフルオートです。例えば「体の大きなお父さんが入った後は、お湯の量が少なくて物足りない」という状況になるケースもあるかと思います。
そんな時に「ちょっとお湯を増やしたい」と思ったら、ふろ自動ボタンを押すだけで元通りに調整してくれる、あるいは自動で増やしてくれる機能を持っているのがフルオートです。
セミオートの場合は、手動で「たし湯」する必要があります。この時に押すボタンはあくまで「たし湯」ボタンであり、ふろ自動ボタンを押しても、セミオートの場合は決まった量のお湯張りはできません。
セミオートのふろ自動ボタンは、あくまで「空の浴槽にお湯張りをする」前提の機能となっています。
その他にも、フルオートでは「自動たし湯/自動ふろ配管クリーン/ごきげんオート」などの便利な機能が搭載されています。
もちろんこれらの機能は、常時ONにするかどうかはユーザーが決められるので、「勝手に湯量を増やされると水道料金が気になる」という場合は、機能をオフにしてあげることでオートタイプのように使用することも可能です。
本体価格は「フルオート>オート>標準」
上記はノーリツの給湯器カタログですが、同レベルの機種です。左側がフルオート、右側がオートとなっています。大体ほとんどの機種で、フルオートとオートの間の金額差は「約3万円」程度です。
希望小売価格で3万円くらいの金額差なので、ここからの値引きを考慮すると、そこまで大きな金額差にはならないことが多いです。
ただし、前項でご紹介したようなフルオートとオートの機能を比べた場合に「この程度の差なら、我が家はオートで十分!」と感じるユーザーも少なくありません。
一方でこちらは、お湯張り機能のない標準タイプです。
こちらは頭1つか2つ分、給湯器の本体価格が安くなっています。ここまで金額差が開くと、大幅値引きがあっても決して無視できるような差ではないと言えるでしょう。
【OTQ-G4702シリーズの場合】
- フルオート:390000円
- オート:360000円
- 標準:305000円
フルオートとオートの金額差はそこまで大きくありませんが、フルオートと標準の金額差は非常に大きなものとなっています。ただし、何度も言うようにこれは希望小売価格の差です。
実際に石油給湯器を交換する場面になれば、ここから値引きがあってそこに取付料や部材費が乗っかって、そこで初めて給湯器の交換費用というカタチで提示されることになります。
「思っていた以上に、これらの金額差が小さい」ということは、非常に良くある話です。もしご自身の中で「絶対にこれ!」という希望がなく、少しでも迷う気持ちがあるのなら複数の見積もりを貰うことをおすすめします。
故障頻度、メンテナンスの手間の違い
給湯器に限らず、機械の多くは「複雑なものほど壊れやすい」という側面を持っています。今回の例で言えば色んな機能を持っているフルオートはそれだけ搭載されている部品も多く、構造もオートや標準タイプの給湯器と比べて複雑です。
単純に考えて「フルオートにしか搭載されていない部品」というのも存在するので、もしそれが故障してしまった場合「他の機種なら故障していなかった部品」という見方もできると思います。
そうやって考えていくと、やはりフルオートは「本体価格も高いうえに、壊れやすい」と言っても過言ではありません。
また、フルオートとオートにはお湯張り機能があり、給湯器から追い炊き配管に対して水圧が掛かります。これによって「追い炊き配管内に汚れが溜まりにくい」という大きなメリットもあるんです。
標準タイプの場合だと、あくまで追い炊き機能のみなので、湯船の中にある皮脂や汚れが追い炊き配管内に滞留してしまうと、そこで菌が増殖してしまうということがよくあります。
よほど綺麗に気を遣っているという場合を除き、標準タイプの場合は「追い炊き配管が汚れだらけ」というケースも少なくありません。
一方でお湯張り機能がある場合は、どんなに掃除が手抜きだったとしても追い炊き配管そのものの汚れが酷いケースはそこまでないです。衛生的に使えて便利であるという部分を考えたら、間違いなくフルオートかセミオートの方がおすすめです。
迷ったら「オート」がおすすめ!
どれにしようか迷ったら、オートタイプを選択しておけば間違いないです。
理由としては、フルオートとオートで実用性の面ではそんなに優劣を感じない点や、フルオートでしか起きない不具合について考えると、セミオートでも十分だと思います。そしてお湯張り機能は、絶対にあった方がいいです。
特に「今までお湯張り機能があったけど、金銭的な問題で標準タイプにグレードダウンしようか悩んでいる」というユーザーは、絶対に辞めた方がいいです。
お湯張り機能に慣れてしまったら、もう標準タイプには戻れない人がほとんどです。できれば、オートタイプ以上を検討してみてください。
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